大雨で河川が大増水した時、トラウト類はどうしているのか?

2021年5月31日

大雨で増水した河川

~釣り人の経験則を裏付ける研究論文~

渓流釣りでもご多分に漏れず役に立つものから心構えみたいなものまで、幾つか格言・ことわざがあります。個人的にはトラウト類が釣れないときの慰めに使う方が多い気はしてます。

思いつくままに幾つかあげますと、

■ヤマメは足で釣れ!

■夏ヤマメ一里一匹

■イワナは石を釣れ!

などなど聞いたことがある方も多いことと思います。

また経験則的に染み付く釣り人ならではの知識があり、中でも「雨後は大物のチャンス」を実践する大物トラウトハンターも多いのではないでしょうか。今回は釣り人の経験則を研究してくれた北海道大学院の環境生物科学部門をとりあげてみます。

大雨の増水でトラウトはどんな行動をとるのだろう?

先ほど述べたとおり、雨はトラウト類に大きな影響を与えます。雨後の笹濁りや大きく増水しない程度の雨天も大物や数釣りの大チャンスとして捉えると思います。

そのため弱冠の増水や笹濁りの際に良い釣果に恵まれると、タイミングを見て通い続けることになります。しかし本流が釣りにならないときに支流部に釣り場を求めることで、こんな言葉が伝わっていました。

大雨で河川が大増水した時、渓流魚は小さい枝沢(支流)に逃げ込む

もちろん本流筋よりも支谷・沢の方が水量の増水幅は少ないはずで、そちらが安全にやり過ごせるだろうという人間的知恵の恣意的増幅もあったでしょう。個人的にも釣り場の状況判断として指標にしていた部分もありましたが、研究論文がでてるとはと驚きました。

それは、北海道帯広市を流れる札内川にあるダムの試験放水を利用して実験したのが次の研究で、『ダムによって不自然に調節された川の流れを人工的に自然に戻す大規模な自然再生事業』にかかる河川生物と自然環境への影響と呼べるもので、以下はそのページへのリンクです。

◎釣り人は正しかった:河川氾濫時における魚類の支流避難仮説の実験的検証

※最初に見た一般向けの記事が2016年9月4日現在アクセスできていませんので、上記ページを紹介しておきます。

論文系が苦手な方のために分かりやすい箇所を抜き出してみます。

今回、実際に支流に逃げ込んでくる魚がいたのに驚きました。しかも、まさに増水の最中にのみ支流に入ってきて水が引くとすぐに本流に戻って行きました。一方、どんな支流にも逃げ込んでくるわけではなく、体サイズや魚種によっても違いがあるなど、単純な話ではないことも分かりました。本研究結果は、釣り人の逸話から魚類の興味深い習性が明らかになっただけでなく、普段は利用されない場所や、本流と支流間の繋がりが重要といった河川生物の保全を考えるうえでも有用な知見が提供できました

釣り人のために簡単に言うならば、「トラウト類の数を釣りあげるために、増水後で本流の様子を見つつ支流もきっちりと探れ!」 ということでしょうか。

まぁ個人的にも一般社会的にも、河川の生き物にとって本流と支流の繋がりと生活環境が大事ということが再確認できた、そのことの方が大切なことだと思わされました。チャンスを活かした研究に感謝です♪

※全ての個体が支流に逃げるわけではないし、一つの河川で得られた事例であることに注意しつつ今後の成果の発展に期待です。

トラウトは増水で流されないという研究も

トラウト好きとして「河川氾濫時における魚類の支流避難仮説の実験的検証」の中で言及されていた、もうひとつの興味深い事例を下に引用させていただく。

魚類に電波発信器を付けた研究では大増水中も石の下で耐えていたという報告。
(中略)
テレメトリーを使った過去の研究では、サケ科魚類は洪水時でも本流の倒木や石の下などに避難できることが示唆(註1)されていた。特に、南限のサケ科魚類である台湾のサラマオマス (Oncorhynchus formosa)では台風による大増水時でも、石の下から全く場所を変えなかった。

※註1:示唆論考は割愛させていただきます。

これらの研究も、「魚は大渕、溜まり、石の下で大水をやり過ごす」と伝えられてきたことを裏付けるもので、トラウト達もそう簡単に流されることはなく、今棲んでいる慣れた生活範囲を簡単には変えない。つまり釣り人としてトラウトの良型を釣るときに、隠れ家、捕食場所そして周辺環境を考えるのもやはり理屈にあってるみたいです。

大雨の増水でトラウトの行動は逃げるか隠れるかであり、一時的にかなり空腹状態になっており水量が落ち着き始めれば捕食活動を開始する、つまり釣り人に大チャンスってことで良さそうかと♪

簡単に移動せず、生活環境を変えないという安定的定住志向を示す論文もありましたので、以下にリンクを掲載しておきます。

イワメ(無斑型アマゴ)の生息環境と保護

九州北東部におけるアマゴの保全に関する研究

大分県大野川緒方川水系の源流域に棲むアマゴ及びイワメ禁猟区内の調査でありますが、定住性の高さが示されています。

イワメ画像参照:渓流

同時に大きな地形的変化がないこともあるのでしょうが、イワメが一定の匹数推移を続け爆発的な増減をしていない点(内水面のキャパはあまりにも小さい)には、釣り人として注意をしておきたいところだと思っています。

そういえば個人的な経験ですが、確かにこの禁猟区より下流でイワメを見たことはなく、ほんとに時折誰かが釣った@@と耳にすることがあったくらいです。下流域はアラサーの頃に通い詰めてたんですがw そういえば四国に居た時はそれらしき個体をビクに入れてたタクシードライバーの渓流マンと出会ったことが思い出されます♪

ちょうど台風が来ております♪

研究はありがたいですね^^ 釣り人としてまた知的欲求を満たしてくれるものとして研究者の方々に感謝です。

さてさて、渓流釣りに行きたいのですが、九州では梅雨があけたあたりから雨らしい雨がほとんどなく、8月中旬を過ぎれば県北の山国川で取水制限もちらほらと、そのうちに雨も降るさ…。と待ち遠しかった2016年の夏も終りです。

おお、皆様! 台風12号が接近していますぞ。早速、今回の研究論文を自身の釣りに活かすときではないでしょうか、増水で深いエゴに隠れていた大物トラウトがのっそりと餌を食べに出てくるかもデス♪