日之影川釣行にて、幻の町並みとハチノコおばさん

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エノハとアメゴ釣りの記憶 第6話

四国でアメゴを追っかけていた頃は、ネットなどはなかったので情報は釣具屋、釣友そして情報誌などが頼りだった。

渓流雑誌などで見たアルプスや黒部にも遠い憧れは抱きつつも、帰省での釣行の方が現実的な九州でヤマメを釣りたい川といえば五ヶ瀬川と耳川だったように思う。
その五ヶ瀬川水系へ初めて足を伸ばしたのは何時頃だったのか正確に覚えてないけれど、場所が日之影川だったことは覚えている。

~ エノハ・アメゴ釣りの記憶 第6話 ~

日之影川へヤマメ釣りに通う

大分方面から日之影川へ向かう場合、道は一択♪

国道10号を南下し犬飼で国道326号、次いで宇目から県道6号へと。
以前はトトロのバス停前を通っていたが今は新道を使い木浦地区、そして杉が越のトンネルを抜ける。

九州の山好きなら名前はしってるであろう「とやんたき」が見えれば日之影川水系に入ったことが実感できる。

日之影川のヤマメ釣りと概要はこちらに掲載しているので、ご参照ください。
※今は東九州自動車道があるので下流域をメインに釣るなら延岡経由もあるけれど、杉ヶ越を通い慣れてるせいかこちらの選択肢は憧渓にない♪

大野川支流の緒方川、奥嶽川と並んでこの時期通いこんでいたのがこの日之影川。

今思えば手前の北川上流域にあたるべにがら谷や西山川などの開拓も進めておくべきだったなぁとは思うものの、何故か杉ヶ越トンネルを抜けるのが使命のように感じてた気がする。

朧げな記憶と町並み

往復の行程を含めて日之影川釣行に慣れてきた頃だったか、前日の仕事が忙しく疲れたままだったが無理やり車を走らせてヤマメを狙うことにした。

まずはと、重内(オモウチ)谷やくわづる谷周辺で7~8寸ほどを釣った後、英国館前の橋を渡り本流筋を下ろうと車を進めたところまではぼんやりとした記憶がある。

小さな集落にさしかかる直前のこと、なんだか眩しくて一瞬だけ目を閉じた気がする。
(ここらは、本当にはっきりしないのだけれど、多分河鹿荘辺りだったはず^^)
そして通りがかった集落は、大正から昭和初期の町並みのような古い家ばかり‥。

前日の疲れから来る幻覚だろうか?
それとも懐かしく感じられた四国山地を巡っていた頃のデジャヴなのか?

何時の間にか車を降りて古臭いモンペを着たおばぁ達がニコニコと話しかけてくるのに対応している。
何だか楽し気に話しているようだけれど、うつつかまぼろしか、もやのかかったフィルター越しに自分の応対する姿すら見えていた。

そして、目が覚めたように意識がはっきりとした時には宇目から大分へと帰る国道326号にいた‥。
杉ケ越のトンネルも木浦地区も通った記憶はないのがねぇ、もう本当に怖かった。

後日、幾度となく日之影川を訪れてもその町並みの場所は見当たらなかったし、群がって来たはずおばぁ達の姿も無い。
これまでの渓流釣りの中で最も不思議な体験をした1日だ。

時折このことを思い返すと、もしかしたらこの時は日之影川には行ってないのかもしれないのではと…。
こんな体験が昔話や伝説を産む精神状態なのかもと冷静に分析はしているけれどもが。

日之影川本流で長竿を振り回す♪

不思議な体験から数年後(のはずw)、五ヶ瀬川や大野川の本流釣りでもと思っているところに7.2mの安いメバル竿と出会った。
素直に本流竿を買う方が良いのだが、お財布状況と天邪鬼な性格によるものだろう(笑!)。

もちろん、「よっしゃ~♪」とばかりに日之影川の中・下流域へと出撃した。
さすがに7.2mは長く、3.6mから5.4mに持ち替えたとき以上の長さと重さの違いに苦労をさせられた。

この日釣れてくるのは小さなヤマメかハヤばかり、というわけで振込みや取り回しだけでなく取り込みにも一苦労。
最初は片手で抜きもう一方の手で受けていたが、竿が重いのでタイミングが一拍遅れる。

そこで郡上釣りなどで聞いていた腰タモで受ける形を練習。
まぁ簡単には巧くいかなかったけれど。

※この頃は多分抜きから手ダモの網受けもしていたはず。
 リリースするならと手返しの面と魚体のことを考え、今は大型の取り込み時のみタモを使用。

やってみると、「なるほど、理にかなっている」と納得。
「必要は発明の母なんだな♪」なんて変に納得しながら、釣り上がっていった。

良型ヤマメは全くかからないので、おいらはこの流れを諦め上流へ移動する事にした。

そこで脱渓できそうな斜面をあった家の前を通ると、
「ちょっとお兄さん♪」、声がかかった。

ハチノコおばさん登場

ニコニコしながら優しげなおばさんが手招きし、
「エノハ釣れたかぇ?」と問いかけられた。
「いんにゃぁ、小さいのばかりで‥」 歩み寄りながらおいらも応じる。

するとこれまでよりももっとニコニコとした笑顔でおばさんは切り出した。
「ミミズを使いよったんやろ?」
「はい☆」

そう答えると、
「これ使いよ♪」
とおばさんがこちらに何かを差し出してくれた。

「これは‥、蜂の巣?」
「ハチノコが好いでぇ」
「おばさん、ありがとう!」

この時までに聞いた事はあり使ってみたいエサの一つだったが、刺されたりが嫌で手を出した事はなかった。

「ハチノコ釣れるって聞いているんで、ホント助かります!」
「川で釣ってるのみたらあんまり釣れてないみたいだったからねぇ。それならハチノコの方が好いんじゃないかと思って採ったんよ。ちょっと蜂には刺されたけどね」

声にならない感謝とはこのことだった。
見ず知らずの、通りがかりの釣り人に対するちょっとした優しさ。

このあとは竿を5.4mに持ち替え上流へと移動、7~8寸ほどのエノハの数釣りを楽しめた。
大型との出会いは無かったけれど、良い経験だった。

この日以来、ハチノコもおいらのエサリスト入り。
ハチノコおばさん、色々ありがとうございました! そして日之影川ありがとう!

※エサリストには入ってるんだけどね、蜂の巣とって使ったらまぁ分かると思う。
 取り置きしておくのが難しいので、当日採取が最良なんじゃないかなと…。

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