今回の舞台は大野川支流の奥嶽川、ここは高知の東川川と同じく釣行の際に事件が多かった場所。
ふと思い返すだけでもダニに噛まれたり、頭上から蛇が落ちて来たり、カモシカに逢ったり、ヘツリに失敗して大渕に飛び込んだりなどなど、機会があれば記しておきたいことだらけだ。
そういえば谷底にユンボが落ちてるのを見たこともあったけど、どうなったんだろうか(笑!)。
奥嶽川の紹介は下記のページにて、アマゴ釣行のお役に立てばと思っちょります。
ではでは、お話するといたしましょう。
~ エノハ・アメゴ釣りの記憶 第7話 ~
美しきアマゴ求め奥嶽川へ
チンの字と大分川で出会って3年目くらいだったろうか。
アジのサビキ釣りだったか、河口周辺でノホホンと釣りをしている大学生の彼に話しかけたのが始まりだ。
その翌年から渓流釣りに同行しはじめ、お互いに気の合う釣りの相棒となっていた。
ルアーもする、投網もする、貝堀もする、登山もする、キャンプもすると綺麗に言えばアウトドアだが、単に野外で遊ぶ事を根っから楽しんでいた。
特に「釣り」ってよりは魚を獲る、魚と遊ぶ!そんな風に。
チンの字も渓流へ本格参戦し、大野川支流の稲葉川や玉来川そして大分川や筑後川などに連れまわされていたはず。
釣り場は源流の手前から下流といった場所が多かったせいか、
「どっこも水が汚ねえっす」
と文句を垂れやがった。
というわけで大野川水系の奥嶽川へとアマゴを狙いに出撃。
祖母傾山系では山犬だの狼だのって話が盛りあがっていた前後(2000年頃)だったか、おいら達には良型アマゴではなく子鹿との出会いが待っていた。
バンビ1号(子鹿)が川に滑落!?
大野川水系の奥嶽川は同水系の中でも水も谷も非常に美しく、癒される感覚になる。
もちろん祖母・傾の懐に抱かれる感覚とともに険しい流れも、谷を愛するおいらにとっては愛おしさを憶える場所でもある。
多分、この辺りだったかと♪
とりあえず下の方から釣ってみるがその時の記憶はないというか、ごちゃごちゃになっている。
確か7寸を越えるようなアマゴには出会っていないと思う。
そこで車に乗って少し上流へと移動、チンの字が蝶を見つけては写真を撮るなど、お気楽な感じだった。
滑落というか飛び込まざるをえなかった小滝は嫌だったので、そこを外してから入るぞ~♪ と2~3m降って川原に。
チンの字は仕掛けを作り直すのでゴソゴソしている。
こちらは仕掛け巻きからポロポロと糸を引き出し、すぐに準備完了!
憧:「よい、釣り始めるど♪」
チン:「うぅ、お任せしますぅ‥」
この間に良型釣ってニコニコだ、いやいや尺物出たらどうしよう? なんて、頭の中は妄想が爆発中。
ではではと目の前の大岩の上から釣る事にしようか、
「よっこらしょ♪」
と対岸のナメで水を飲んでいた居た子鹿が目に飛び込んできた!(@@)!
「うわ!」と叫んだのに気づいた子鹿は慌てて後ろの藪へ逃げようとしたのだが、そこはナメの上だ‥。
ツルリと足を滑らせ「バシャーン」、水しぶきを上げて壷に落ち込んでしまった。
慌て者のおいらは岩の下でもぞもぞしているチンの字に声をかける!
憧:「おい、ちょおちょお」
チン:「はぁ?」
憧:「やけんのぉ、来い来いっちゃ!」
チン:「へ?」
相手に伝わらないもどかしさ‥。
振り返れば子鹿(緒方辺りで遅い昼食時にバンビ1号と命名)は壷の巻き返しの中でもがいている。
憧:「何しよんのかぇ!来いっちゃ!」
チン:「どしたんすか?そんなに慌てて」
憧:「いいけん、急いで来いっちゃ!」
チン:「はいはい」
と岩の上に来たチンの字が一言、
チン:「鹿が‥‥、おぼれてる‥」
流れに乗せられてグルグルと巻き返しの中を右往左往するバンビ1号を見ながら、
憧:「よい、棒っ切れねぇか?」
チン:「んんッ??」
彼の額に別の汗が流れたようで、恐る恐る聞いてきた。
チン:「も、もしかして?ヤ、ヤるんですか??」
その言葉に正直困ってしまった、助けるのか?喰うのか?
(いやまぁ、その〆ることはできんのですけどねw)
少し沈黙した後、
憧:「何云いよるんか、助けるんじゃあわぇ!」
と格好よく横を向くと、すでに彼は使えそうな枝を探しに走ったが、使えそうな棒切れは無かった。
残念なような、ほっとしたような、方法が無いような複雑な感覚♪
子鹿の川流れ
こちらがわも足元はツルツル♪
岩を降りてからチンの字に確保してもらい手を伸ばしてみるが1mほど届かない。
バンビ1号も助けてほしそうな、警戒しているような表情。
そしてクルリン黒々した眼(マナコ)と目が合ってしまった。
「可愛いじゃネェか、ヤッパ!」
これは何とか助けたい!
そう強く思うが、手も足も出ないとはこのことだ。
落ちた方のナメに何度となく前足はかかるものの、取り付くまでにはいたらず、再び流れの中に引き戻されるバンビ1号。
オロオロする2人を尻目に意を決した彼は下流側へと流される事を決めた、そう見えた気がする。
下流側の肩も深く流れは早い、その下の流芯の流れも強い。
バンビ1号は水にもて遊ばれる如く、もまれながら落ち込みを一つ一つと落ちてゆく。
足をばたつかせては肩にあるナメ岩に取り付こうとするが、水の流れは簡単にそうさせてはくれない。
2人が先回りできればいいのだが、あっという間に降るバンビ1号を追いかけるだけだった。
頭さえ打たなければ気絶する事はないから、流れが弱く少しでも浅くなって足が届けば‥。
そう願いながら2人はバンビ1号が流される後を追いかけた。
5つほど落ち込みを流されたところが幸いにも足が届いたようで、何とか対岸へとたどり着いたバンビ1号。
水から上がり崖を駆け上る前に、立ち止まり振り返った。
今流された流れを確認したのか、人間に追いかけられるのを警戒したのか?
それとも「大丈夫だよ♪」と合図を送ってくれたのか?
安心した2人は釣りを再開したものの、ほっとした安堵感からかすぐに釣りをやめて帰途に着いた。
せめてお腹だけでも満たそうかと、立ち寄ったのは緒方の道の駅。
メニューにあった鹿刺しに苦笑いしながら、
「次は喰ってやるかな」と。
【2022年追記】
雨後だったか記憶にはないけれど、水量も多く流れも速かった日だった。
20年以上が過ぎた今の奥嶽川の水量を見ると、こんなこと起きるかなって感じがするほど水量は少なく感じられるけれど。
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