和 名 イワナ
地方名 イモナ、イモ、イモウオ、タンブリ、キリクチ、ゴギ
岩魚・嘉魚
学 名 Salvelinus leucomaenis
英 名 Whitespotted char、Japanese char
寿 命 5~6年
イワナの生態
ヤマメ・アマゴよりも冷水性の魚なのがこのイワナで、流れが急で水が冷たくきれいな処に生息。標高2,300mほどまで分布可能。産卵期は10月頃で流れの緩やかな浅いところで産卵。卵は冬にふ化し春になってから泳ぎ始める。5~6年以上生きる個体もあり、何回も産卵する。
旬は5~6月から夏にかけてで、塩焼き・唐揚げ・刺身など一般的だが、焼いた岩魚に熱く燗をつけた日本酒を注いだ骨酒は趣ある美味。長野に居たとき頂いたが、酔っ払いすぎており「旨い旨い」と飲んではいたが、余り記憶に残ってないことが残念。味をしめてアメゴの骨酒をしてみたが、そうでもなかった。
ヤマメ・アマゴと同様に人工種苗が各河川に放流されている。そのためこれまで生息していなかった川でもイワナが釣れるようになったが、系統群ごとに特徴を維持したまま自然分布していた個体への影響が懸念されている。九州のエノハ達も同様の問題を抱えている、というより放流に対する意識レベルが上がることを期待する。
イワナの分布と形態
日本の淡水魚の中で最も標高の高いところに棲むのがこのイワナの仲間。本州河川の最上流部の急峻な渓谷にも棲みついている。昔から幻の魚として、釣り人の憧れの的でもある。
狭義には、日本各地から朝鮮半島東岸、樺太、千島列島、カムチャツカ半島までの河川とオホーツク海、ベーリング海。この魚は川の最上流に生息して居たので、地理的に隔離され同じ川でも「沢ごとに模様が違う」など遺伝的に変異があると言われている。そのため細かく分類された(亜種)ものを含めれば世界に30種以上が分布。詳しく言えば(頭が混乱してます…)、日本の岩魚は次のように分類される。
亜種を含めて
○アメマス=イワナ(Salvelinus leucomaenis leucomaenis)
北海道から東北と関東地方の一部から朝鮮半島東岸、樺太、千島列島、カムチャツカ半島までの河川とオホーツク海、ベーリング海と最も広く分布。イワナでは唯一降海型と陸封型がる。エゾイワナとも呼ばれる。降海型では全長 70~80 cm、7kgくらいで、陸封型では35cm程度が一般的。体側の白点が最も目立つ。
降海型であるアメマスは、2年目に海に下って2年以上を海で過ごし、成熟すると産卵のために川を遡上。
○ニッコウイワナ(Salvelinus leucomaenis f.pluvinus)
イワナの日本固有亜種。東北地方、関東地方の山岳部から、滋賀県、鳥取県にかけて分布し、全長30~80cm程度まで。はっきりとした体側の白斑があり、体の側面から腹部にかけて橙色~薄桃色の斑紋が散在しているのが特徴。
○ヤマトイワナ(Salvelinus leucomaenis f.japonicus)
イワナの日本固有亜種。本州中部地方の太平洋側の河川上流部に生息。体長25cm。他のイワナ亜種に特徴的な白い斑点は目立たず、体の側面に小さな紅色の小斑が散在。
※キリクチと呼ばれる個体群が、紀伊半島の十津川水系(奈良県)に分布。これは、ヤマトイワナの地域変異型として考えるのが一般的のようだ。このキリクチ個体群がイワナ類の南限。
○ゴギ(Salvelinus leucomaenis imbrius)
イワナの日本固有亜種で、中国地方の島根県、岡山県、広島県、山口県などの山岳地帯に生息。背部から体側の白斑が、頭部にも続いているのが大きな特徴。体長は25cm程度。日本での分布の西限亜種で、ゴギの分布の西南限は、日本海側では島根県の横田川、瀬戸内海側では山口県の岩国川とされる。
そして同属である
○オショロコマ(Salvelinus malma krasheninnikovi)
イワナよりもさらに寒冷気候に適応した種類と言われており、北極海と太平洋北部に広く分布。太平洋岸では、朝鮮半島、北海道からベーリング海、アラスカにかけて分布。英名はドリーヴァーデン。
降海型では背部が暗青色、体側は灰色、腹面は白色をだが、陸封型では背面は暗褐色から褐色。イワナで特徴的な白い斑点とは違い、黄色、橙色、あるいは赤色の斑点が体側に散在。繁殖期には、体の各部が橙色から赤く発色し、側面の小赤斑もより鮮やかになる。
日本より北方に生息する降海型は、孵化後3~4年を河川で過ごして海へと下り、沿岸部で2~3年過ごし繁殖のために河川を遡上。北海道ではイワナ(アメマス)よりもさらに上流に生息し、基本的に海に下ることはない。北海道に生息する陸封型は全長20cm程度だが、降海型では全長1mを越える個体も報告されている。
○ミヤベイワナ(Salvelinus malma mitabei)
イワナと呼ばれるがオショロコマの日本固有亜種で、北海道の然別湖とそこに流れ込む水系に生息し、最大で全長50~70cm程。海の代わりに湖に下るタイプといえ、生涯を河川に陸封された北海道産のオショロコマよりも大型になる。体色は背側が暗色で腹側は淡黄紅色。
という6種類が日本に生息。
分類上は、イワナ属のうちの1種(アメマス)にイワナという和名がつけられているが、近縁種のオショロコマも含めて広義のイワナとして扱われることが多いので、ここ(エノハ亭)ではイワナとオショロコマを含むイワナ属の魚のうち移植されていない日本在来種を総称してイワナと呼んでおく。同属であるカワマス(ブルックトラウト)、レイクトラウトなどが移入されており、一部地域では外来種として定着しているためでもある。
属名、亜種名、地方名がごっちゃに入り乱れているため、多くの九州の釣り人には分類が不能なレベルかもしれません、いかんせん見れる魚体が少ないのでおいらも図鑑レベルです。正直九州内では、近くで釣ったのをイワナと云っておけば間違いないでしょう(笑!)。ニッコウ、それともヤマトなんて聞かれたら、ハハハ‥。
備考・その他
日本の岩魚ほど狭い地域で違った形態を持つチャーは、世界的に見ても珍しく、川ごとにその地域固有の岩魚が居たと言われ、中でも然別湖のミヤベイワナ、紀伊半島のキリクチ、山陰地方のゴギなどが特徴ある岩魚として有名。その他の岩魚の系統も混乱が生じているが、これら産地が限定されろ個体群は特に保護の必要性が叫ばれている。
岩魚も他のサケ類と同様、降海型が遡上して産卵するという生活史をもっている。しかし、日本産のイワナは世界のイワナ類の中で最も緯度の低い地方に生息する南限の種。そのため冷水の流れる河川の源流付近に一生とどまる陸封型の生活史をもつものばかりで、降海型の個体群は北海道産のイワナだけである。
渓流釣りの中でもヤマメ・アマゴと2分する人気の魚種。ヤマメとアマゴよりもかなり貪欲で、飲んだ針をつけたまま放流したらすぐに食ってくることもあるほど。ルアーやフライフィッシングで狙うのも良いが、個人的に黒部や飯豊などの山奥に出かけて泊って狙ってみたい。
九州でイワナが釣れる所もあります。知っている人は知っているが、知らない人は知らない場所のようです。
渓流釣りの対象魚 トラウト類
トラウト類の生態に関する「エノハ亭」内の関連頁をご紹介。
国内の主な対象魚であるヤマメ、アマゴ、イワナ、ニジマスをより知っておくのも楽しいものです。
エノハ亭は、読者の方の楽しい渓流釣りを応援しています。