イワナは漢字で記すと「嘉魚」とか「鮇」となる。
もちろん、存じておりましたとも。
しかし記事のリライトの為に、享保・元文期の「肥後国之内熊本領産物帳」を確認していたところ、「鮇」の文字が…。
2、3分ぼ~っと眺めて江戸期の熊本にイワナが居たと喜んだあとで、頭を抱えてしまいました。
やっちまってたかぁ>< 発表してる論文とかでなくて良かったなぁとwwww
どういうわけか、『○(魚編に朱)⇒かまつか』と掲載してました、すいません><
誤字脱字に勘違い、地味に多いんですよねぇ、どう見たら未が朱になってたのか不明、はぁ(涙)
まぁ、前記事もうすぐ消すからね、良いのであるんである、ホントか?
さてさて、イワナについてあんまり知らない人も、ちょっと知ってる人も何が大事なの?って思うかもだけど。
理解できてる人には、ちょっとだけ「オオゴト」かもwww
九州にはイワナは存在してなかったというのは、学会でいえば定説、釣り人でいえば常識といえます。
現在イワナ類の分布西南限は、日本海側では島根県高津川、瀬戸内海側では山口県岩国川となってます。
そう、あれぇ? でしょ。
分布外のはずの九州だけど、江戸時代の熊本にイワナが居たってこと?
そこら辺をちょっと見てみましょお!
肥後国之内熊本領産物帳に記された「鮇」の文字
一応証拠となる画像を挙げておきます。
一番右が「鮇」=イワナの文字。
参考までにその他は、赤魚、げんきう、うそむき、びんた、小鱸、はちふり、てふり、しいのふた、みせ。
科学書院版にては、上記の通り原典写しの下段に読みが書いてあるからくずし字が苦手な方でもダイジョブですw
ただし、その手の筋の人はくずし字が読めないと詰むこともあるのですがw
原典・原本、裏取り大事、キリッ!!
肥後国之内熊本領産物帳については魚名方言等の調査で上げておく予定でしたが、急に「鮇」の文字が見つかったので雑記にて一部先走った格好です♪
まぁ、当時の藩が幕府に提出した公式資料の控えなので、信頼性はかなり高いはず。
提出された側の幕府の物はキレイサッパリ、全て失われているというのは、なんだかなぁですけれど。
この記述を信頼するなら、1730年頃に熊本藩領に「鮇」という魚が居たと言えるでしょう。
ただし、 「鮇」 =イワナかと即断もできないのが悩ましいところ。
注記が無いのがその証拠で、おそらく肥後藩では一般的な魚で名称が多かったため報告に際してこの文字を用いた可能性もあるからです。
追記:A大先生、Y師匠いいっすかね? 大丈夫っすかね? 少し確認しておきたくてw
産物帳の「鮇」を見ても…
残念ながら「鮇」の詳細は「肥後国之内熊本領産物帳」からは全く分かりません。
「鮇」に註書きもありません、ハイ。
上記の様に「しいのふた」には註書きが別添で記されているものの、そちらは内容も生態に関するもののみで、他魚種に関しても「○○川ニ居リ」などに等も全く書かれていません。
くぅぅ、残念です。
同時期の『筑前国産物帳』などに記されるエノハには本文中に注書きはありますが、
ます
筑前国産物帳より
えのは
以上二種甚まれなり
この通り肥後国と同じく生息場所は分かりません。
その理由ですが、国別の藩領産物帳を作るにあたって藩内の各村や郡からの基礎資料が提出されており、これを原本に幕府に提出するべき産物帳が作られたためといえます。
熊本藩領で現存しているとされるのは、「山鹿郡山鹿中村両手永名品」と「山本郡正院手永土産」の2冊のみ。
まぁ産物帳関連でこの手の村方文書が現存しているのは全国でたったの25冊などと言われているので、熊本藩のみで2冊も残っているというのは史料的にはもちろん凄い事です。
ただしこの2冊に「鮇」に関しての記載は無く、エノハですら山鹿にナシと記されています。
「鮇」を報告したであろう手永の報告文書が出てきたら一発なんですが…。
もしもですが、各手永の総庄屋の家系の方や親戚などの蔵からなんてことがあればご連絡よろw まぁ素直に熊本県の文化財課にご一報が一番ですけれどもネネネwww
問題は「鮇」が何処の川に居たのかということ
当時の肥後国熊本藩領は飽田郡、詫摩郡、山本郡、合志郡、菊池郡、山鹿郡、玉名郡、宇土郡、上益城郡、下益城郡、八代郡、葦北郡、阿蘇郡となります。
なお、この時期の熊本藩領には、天草郡及び八代郡五箇荘と人吉藩領球磨郡は含まれません。
かつ資料のあった山鹿郡(山鹿中村の2手永のみ)、山本郡(正院手永のみ)も当然除外されます。
つまり、飽田郡、詫摩郡、合志郡、菊池郡、玉名郡、宇土郡、上益城郡、下益城郡、八代郡(五箇荘除)、葦北郡、阿蘇郡のどこかに「鮇」の報告をした箇所があったということ。
もちろん、一カ所だけではなかったかもしれません。
この範囲を現在に当てはめてみると、天草諸島、球磨郡、人吉市、八代市五箇荘以外の熊本県となり、その範囲を流れている大きな川の名前を挙げてみると、菊池川、白川、緑川、氷川に筑後川、五ヶ瀬川、大野川の県内域が考えられます。
これらの大部分が含まれており上源流域であることを加味すると、上益城郡、阿蘇郡のどこかの手永が報告したのかとは思いますが、憶測は止めておきます。
ただし、熊本「鮇」を確定するには高いハードル有
享保(きょうほう)・元文(げんぶん)年間(1716~1741年)に肥後国熊本藩領内に「鮇」発見!だと喜んでいましたが、この文章を書きながら冷静になりました。
一、「鮇」の用例(同時期の)をもっと知らないといけないこと。
一、肥後国之内熊本領産物帳の史料の確実性を確かめること。
※「鮇」自体の書き間違いなどの可能性もある。
一、 あてられている「鮇」がイワナを意味しているかの精査が必要。
※未と末の混用・誤記・誤用含めて、他魚種の意味もあるため。
一、上記を確認するために産物帳に記されている魚名を標準和名に比定する作業が必要。
一、周辺国産物帳の精査も必要だということ。
一、裏のとれる史料を発見すること。
などなど、若干ながら冷や汗をかいておりますw
大事なことなので、自戒を込めてもう一度、
原典・原本、裏取り大事、キリッ!!
誤字・脱字・勘違い・読み違いは誰にでもある、ドヤ!
九州におけるイワナ関連の初出史料となるかもですが、残念ながらそう甘くはなさそうです。
現状では 「鮇」=イワナ とは断定できません。
正確に言うならば、肥後国之内熊本領産物帳に「鮇」の文字は使用されているけれども、その読み方と示している魚をイワナとは断定できない、と。
個人的には今後も魚名方言を調べていくので、現段階ではこれくらいにしといてあげます^^
今後は、史料の精査に調査・研究を進めながらということで♪
参考の為に、「イワナ・アメマスの魚名方言」をもご紹介。
今回見つけた「鮇」も一応修正をして入れておきました。
やっと九州の項にもイワナが入ったのは個人的にはとても嬉しい♪
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