ワクド石(別府市) 別府大学体育館前交差点に鎮座するカエルの姿をした大石

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別大体育館前のワクド石

ワクド石と呼ばれる大石は、大分県別府市の別府大学西側、狭い道ながら車通りも多い交差点の一角に鎮座している。
目立つ場所にあるけれども車で通ると見落としがちな交差点の一角で、昔から通る人を眺めてきたのだろう大石だ。

同地域では蛙の事を「ワクド」と呼ぶが、其の名の通りにカエルが空を見上げるような愛らしい姿が特徴。

【ワクド石の位置とルート】

国道10号線からだと、六勝園交差点を別府大学方面へ直進した突き当り右手、山側となる香りの森博物館からは約150m。
別府大学前の通りとアジサイ通りの交差点北側角地に鎮座。

すぐ隣に駐車スペースはあるものの私有地なので、今回の探訪時はアジサイ通りを少し進んだ別府大学体育館駐車場を職員らしき方に挨拶して利用させていただいた。

ワクド石の名称由来と方言

四辻脇にあるワクド石
別府大学正門前方面からのワクド石遠望

名称の由来はその姿がカエルに似ていることからで、豊後方言で蛙を意味する「ワクド石」と呼ばれるようになったとされる。

自然石のままで、手は入ってないと聞いた。

現状は三叉路に見えるが実は四辻(確認するまで知らんかったわぁw)であり、旧豊前街道の四辻の道標として親しまれていたという。

ワクド石のサイズ感
隣の軽自動車と大きさが比較できるかと♪

『別府市歴史散歩(一) 北石垣の西域コース』には、

ワクド石と隣接する別府大学体育館との間が「大字北石垣・小字円通寺」と「大字亀川・小字論田」との大字境である。

別府史談.21 より

ともあり、これらから別府大学体育館前にある「ワクド石」は、四辻の道標石かつ大字の境界石という2つが表象されたものだったことが窺えた。

別大体育館とワクド石の間には水路があり、これが境界線になっていたようで、すぐ西の桜ケ丘に在る大石、平田川の流れ、ワクド石の3つが、しっかりとした地域の境界を形作っていたことが見えてくる。

旧小倉街道沿いにあったことが想定されているので、徒歩や牛馬から交通事情が大きく変化した現在よりも、このワクド石は人々に近しい存在だったのではと思わされた。

ワクド石 左前方から
ワクド石 右後方から

自然石そのままの形で、空を見上げるような姿は愛らしくもある、所有者の方が毎年2月に祭礼を行っているという。
ただ以前の写真等では注連縄が張られていたが、今回の探訪時には無かった点は少しばかり気になる。

ワクド石 後ろから

全国で見ると所謂「カエル石」と呼ばれるのも多く、カエル自体が様々な伝承や背景を持っていることが知られている。
石自体に関連する伝承には境界の意味がないものもあったりするので、カエルに持たされていた事象を含めて今後の調査をしていきたいと思っている。

カエルの伝承・伝説と旧街道の復元ということにも興味を惹かれた探訪となりました♪

大分から熊本にかけて点在するワクド石

ワクド石という名称を持つ大石・巨石は、その方言分布と共に大分県中部から熊本県北部に点在している。

ワクド石 真正面

今後の探訪リストを兼ねて上記区域内に存在している「ワクド石」を調べてみたので、メモ代わりに列挙しておく。
近場から順次探訪予定♪

・大分県大分市白木 ワクド石
・大分県別府市鶴見岳山頂部 ワクド石
・大分県由布市湯布院町川西内徳野 ワクド石
・熊本県菊池市旭志川辺ワクド石 及びワクド石遺跡
・熊本県阿蘇市一の宮町手野 ワクド石
・熊本県熊本市西区池上町日影 板碑 「ワクド石」
・熊本県山鹿市菊鹿町 歴史公園鞠智城内 ワクド石
・熊本県菊池市旭志姫井 智者ヶ峰の巨石群中 ワクド石

これらは全てが「ワクド」なのであるが、同分布域には「ワック、ワッコ(ン)」という方言も残されているので注意しておきたい。

また、大分県南の佐伯市、豊後大野市周辺では「バクドやバック(ン)」であったり、熊本県北の玉名周辺から県境を越え福岡県八女市、みやま市、大牟田市などでは「タンガク、タンギャク」という別の系統の方言分布が重なっている

命名された石や伝承を同地域で探す際には、これらの語句にも注意を払いたい。

また、弱冠方言の分布域と異なるものも含めて、以下に2つの大石もあげておこう。

・熊本県玉名市天水町野部田 野部田山のワック石
・福岡県福岡市東区松崎3丁目 ワクロ石

ワクド石の参考史資料等

ワクド石 左後方から

『別府を通る古い道』 恒松栖 別府史談.21 平成20(2008)年 
『別府市歴史散歩(一) 北石垣の西域コース』 日名子洋一 別府史談.9 平成7(1995)年 

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